海の豆知識Vol.83  

県の魚-その9-
---関東編②---

 県の花や鳥のように、全国の都道府県の半数以上が、シンボルとして「県の魚」を制定しています。また県の魚とは別に、それぞれの県の特色ある複数種を選定した「旬の魚・四季の魚」を制定しているところもあるほか、各県の漁師・JFグループが選ぶプライドフィッシュもあります。
 ここでは「県の魚」※と「旬の魚・四季の魚」、「プライドフィッシュ」にまつわるお話をしましょう。今回は、関東地方です。

神奈川県「シラス、ハマグリ」
イラスト:筑波山を背景に水戸黄門一行とヒラメ 茨城県の沖合には、親潮と黒潮が交差し、好漁場となる鹿島灘があり、季節ごとにさまざまな海の幸が水揚げされています。県民の「さかな」に対する関心を高め、茨城の美しい海や川と水産業への理解を深める目的で、県内で漁獲される魚介類から「旬のさかな」の候補を選定し、多くの県民から応募してもらった結果、1995(平成7)年6月に「常磐もの」として特に美味しい、「ヒラメ」が「県のさかな」として指定されました。
 なお、「ヒラメ」は、Vol.67東北編①青森県の魚としても取り上げておりますので、詳しくはバックナンバーをご参照ください。
 また、現在、茨城県では、プライドフィッシュとして、春の茨城のこうなご、鹿島灘はまぐり、夏の茨城のあわび、秋の茨城のしらす、茨城のひらめ、冬の茨城あんこう、茨城常磐のまさばの7種類を取り上げ、地魚の認知度向上や消費拡大に積極的に取り組んでいます。詳しくはプライドフィッシュのホームページをご覧ください。

茨城県ホームページ〉・・・〉いばらきのシンボル
 https://www.pref.ibaraki.jp/bugai/koho/kenmin/profile/symbol.html

イラスト:江ノ島を背景にシラス丼を前にはしゃぐハマグリ茨城県「ヒラメ」
 神奈川県は、東京湾と相模湾の2つの海に面しています。県内には三崎・小田原に代表される25の漁港があり、沿岸の魚から深海魚、遠洋のマグロまで、多種多様な水産物が水揚げされます。
 また、河川や湖でもさまざまな魚が獲れ、相模川や酒匂川などではアユ、芦ノ湖ではワカサギが有名です。
 神奈川県では、県民に県内で獲れる魚について知ってもらおうと、同県で「第25回全国豊かな海づくり大会」を開催する際、県に代表される魚11種類を選び、これを2005(平成17)年4月に「かながわの魚」として定めています。マダイ、アナゴ、シャコ、マダコ、キンメダイ、サバ、マグロ、アジ、シラス、ヒラメ、アユが選ばれ、それぞれに旬の季節があります。
 また、神奈川県では、プライドフィッシュとして、現在、春に湘南しらす、湘南はまぐり、小田原のアジ、夏に佐島の地ダコ、平塚のシイラ、小柴のアナゴ、秋に松輪サバ、江ノ島のカマス(アカカマス)、冬に横須賀市東部漁協のワカメ、小田原のイシダイの10種類を取り上げており、神奈川の魚や漁業の周知に努めるとともに、自慢の魚を食べてもらうようお勧めしています。こちらも詳しくはプライドフィッシュのホームページをご覧ください。

神奈川県ホームページ〉・・・〉かながわの漁業・さかな
 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/kb2/cnt/f480063/index.html

※各都道府県の公式ウェブサイトにおいて、県の花や県の鳥と同様に、都道府県のシンボルとして紹介されているものを、「県の魚」としています。
注)県のシンボルが掲載されているウェブページ(URL)は、本紙発行時のもので、予期せず変更されることがあります。

珪藻① ~海洋生態系の根幹を支える海の森林

 珪藻はケイ酸質の殻に包まれた単細胞の藻類で、世界中の海洋表層だけでなく、河川、湖沼、水たまり、土壌、苔の中に至るまで、水分があって光が届くところであれば、どこにでも生息しています。珪藻の最古の化石記録は1億8500万年前の地層から報告されています。現代では、植物プランクトンの中で最も繁栄しているグループで、現生種だけでも1万種類以上が知られています。図に示したのは南極海の珪藻化石の一例です。珪藻の殻は弁当箱のように上殻と下殻の2枚の殻で構成されています。殻の外形は丸形、三角形、四角形、星形など、同じケイ酸質の骨格を持つ放散虫に比べると平たくて単純な姿をしていますが、よく観察すると殻の表面には精巧かつ多彩な模様があり、種の分類は外形だけでなく、模様によっても区別されます。殻の模様は大きく2つに分けられ、中心から放射状に広がっているものを中心類、中心線に沿って左右対称に見えるものを羽状類と呼びます。
 地球上の酸素の半分は、陸上植物の光合成により生産され、もう半分は海洋表層に生息する植物プランクトンの光合成により生産されています。このうち、珪藻は海洋全体の25%を占め、海域によっては80%を占めることもあります。つまり、珪藻は光合成により私たちの生活に必須な酸素とともに有機物を生産することで、海洋生態系の根幹を支えており「海の森林」「海の牧草」などとも呼ばれています。海の中には熱帯雨林に相当する「珪藻の森林」が存在するのです。また、珪藻は高緯度の冷たい海で特に繁殖し、このような海域では珪藻の高い一次生産に支えられ、魚介類の資源量も豊富です。

(中央研究所 海洋環境グループ 池上 隆仁)

南極海でみられる珪藻化石の一例(暗視野で撮影)

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