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---イシダイ---
海とその生物にまつわる諺や格言についてお話ししましょう。
今回は、イシダイ(石鯛)。スズキ目イシダイ科イシダイ属。地方名:シマダイ(北海道、東北、東京、関西)、クログチ(山口、広島)、英名:Japanese parrot fish、Rock bream。
名前の由来は、石をもかみ砕く歯を持つ魚という意味からきている。幼魚のうちは、黒白の縞がはっきりしているので「縞鯛」と呼ばれる。老成魚になると口の周りが黒くなるので「クチグロ」、「クログチ」などとも呼ばれる。いわゆる「あやかり鯛」の1種。
闘争心が強く、他の魚介類と一緒に飼育できないという点で水族館の悩みの種です。フジツボや貝をかみ砕いて食べるその歯でウミガメさえもかじります。一方、人なつっこい面もあり、水族館では、餌付けによる条件反射を利用した「おさかなショー」で活躍させているところも少なくありません。全長5㎝未満の浮遊生活期の稚魚は、小型の浮遊性甲殻類を摂食します。全長8㎝を超え底生生活に移行する頃から雑食性になり、底生動物や海藻類を食べ、成長するにつれてフジツボやウニなどの付着動物を好んで捕食するようになります。成魚は全長80㎝を超えるものもあり、沿岸の波の荒い岩礁域の水深50m以浅に棲みます。若魚は沖合の人工魚礁や防波堤、港の中などの比較的静穏域に生息していることが多く、海藻やロープなどに付いています。好奇心が強く、潜水中のダイバーの後をついて泳ぐことがよくあります。
主な漁法は、定置網で漁獲されます。遊漁の対象として人気が高く、サザエやトコブシ、ウニ、ヤドカリなどを餌として釣ります。活魚として人気があり、6~8月頃が食べ頃。身が締まっており、刺身にするなら、活魚を締めてあらいや薄造りにすると美味。小振りのものは塩焼きや煮つけに、また、あらもよいだしが出るので、赤味噌仕立てや潮汁にします。少し磯臭さがありますが、山椒をあしらうと臭みが和らぎます。
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イシダイは回遊もするが根魚の部類。イシダイに限らずカサゴ・クエ・アイナメなどの根魚釣りでは、ハリが根掛かりして地球と綱引きし、切られることが多い。だが、それを恐れず海底に凸凹のある所を集中的に釣ることがよい釣果につながる。
イシダイは、本州の磯釣りマンの恋人的存在。秘策を練り、危険を冒してまでも釣り上げようと努力する。そのイシダイを折角釣ったのに足を滑らせて波にさらわれ、岩に打ち付けられて一命を落とすこともある。荒磯の釣りは危険と隣り合わせという警告の言葉。
年中イシダイを追い回しながら、まだ一尾も釣ったことのないことを言う言葉。磯のイシダイ釣りには魅力が一杯だが、そう簡単に釣れる魚ではない。釣り仲間では希少価値としてささやかれるが、魚屋では手ごろな値段で売っている身近な魚である。
「現代おさかな事典」エヌ・ティー・エス、二階堂清風編著「釣りと魚のことわざ辞典」東京堂出版より転載。
大型魚の好む水温~野外実験にて~(2)温排水に対するブリの反応行動 |
前回、発電所放水口前面の温排水拡散域内に設置した生簀(円形、直径12m、深さ8~9m)を用いた大型魚類の温度反応試験をご紹介しましたが、その最初の対象魚種はブリとしました。その理由は、西日本では冬場に獲れる脂の乗ったブリを寒ブリとして珍重しますが、この寒ブリが温排水による水温の上昇を嫌って沿岸に近づかなくなるのではないかと心配する声が漁師さんから寄せられたからです。
そこで、まず平均体長約70㎝のブリを使って冬季(1月)に試験を行ってみました(下図①)。図の縦軸が生簀内の水深、横軸が月日を示し、背景の色は生簀内の水温を表します。温排水は海面付近を流れるため、水深が浅いほど高い水温を示す赤色になります。また、図中の細かい黒点は、ブリが泳いでいた水深を示しています。意外にも(?)冬季のブリは温排水による水温の上昇を嫌うどころか海面近くの水温が高い層を好んで遊泳することが分りました。ただし、夏季(7月)には逆に温排水の届かない水温の低い層を好むことも明らかになりました(下図②)。
(中央研究所海洋環境グループ 三浦雅大)
生簀内の水温とブリの遊泳水深
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