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---ハマグリ---
海とその生物にまつわる名前の由来についてお話ししましょう。
今回は、ハマグリ(マルスダレガイ目マルスダレガイ科ハマグリ属に分類される二枚貝の総称。和名:ハマグリ、英名:Poker-chip Venus)をご紹介します。
名前の由来は、形が栗に似ていることから「浜栗」、また、浜の小石(グリと呼ぶ)のような貝との説があります。
大ハマグリを漢字で「蜃」と書きます。昔中国では、大ハマグリが暖かく穏やかな日に欠伸をすると、その吐いた気から空中に楼閣が現れる、「蜃気楼」という気象現象(日本では「貝櫓(かいやぐら)」とも呼ばれる)が信じられたそうです。
また、子供などが非行に走ることを「ぐれる」と言いますが、ハマグリの貝殻の合わせ具合が噛み合わないこと(ぐれはま)から転じた言葉です。
歴史上有名な「蛤御門の変」は、幕末に長州藩が薩摩・会津藩の連合軍と戦って敗れた戦のことですが、これは、宝永の大火で京都御所が炎上した際、それまで堅く閉じられていた新在家御門が、この時ばかりは開門されたことから、庶民に「焼けて口開く蛤御門」と呼ばれ、以降は蛤御門となったことに由来します。
ハマグリは、本州以南から九州、朝鮮半島、中国等の内湾や河口付近の砂泥底に生息します。現在、干潟環境の悪化のため、資源量が著しく減少し、特に日本産は絶滅を危惧されています。
冬から春が旬のこの貝は、栄養価が高く美味で、縄文の昔から人々に好まれて来た食材です。
ちなみに、雛祭り、特に婚礼など慶事の祝い膳に使われるようになったのは、徳川8代将軍吉宗の発案と伝えられます。
他の用途としては、貝合わせ、碁石などの遊具や、衣服のボタン、目薬や子供向け砂糖駄菓子の容器などに広く貝殻が利用されて来ました。
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海に産する蛤を山で探すように、見当違いにより方法を誤れば、決して成功しないたとえ。
中国では、晩秋に浜辺で騒いでいた雀たちが、海に入って蛤に変わると信じられていたことから、物事の変わり易いさまをいう。
引き潮のとき、蛤は水管から粘液を出し、これを利用して潮の流れに乗り、何と1分間に1メートルも移動するという。見た目では想像しがたい驚くべきこの早さ。
CO2が海洋生物に及ぼす影響(6) |
今回はCO2がおよぼす海産魚の細胞学的な影響について紹介します。普段、呼吸や代謝で作られた体内のCO2は、主としてエラを通して外界(=海水)へと排出されます。ところが海水のCO2濃度を高めてやると、今後は逆に海水からCO2が体内に入ってきてしまいます。このため体内のCO2濃度がどんどん上昇してしまいますが、海水と体内のイオンの出入りを調節することで対処しようとします。この時に活躍するのが塩類(えんるい)細胞です。塩類細胞は体内と外界の間でイオンの出し入れを担っている細胞でエラにたくさんあります。ふ化後まもない数mmの仔魚はまだエラを持っていませんが、その代わりに体表全体に塩類細胞を持っています(写真)。高CO2環境ではこの塩類細胞が活発に機能することが確かめられています。生物の致死影響や成長影響などの裏付けとして、このような細胞の観察も行なっています。
(事務局 吉川貴志)
写真 マダイ仔魚の表皮に分布する塩類細胞
(緑色の部分:コンピュータ上の画像処理で着色)
白い線は0.1mm.吉川(2004)より引用
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