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---午(馬)にちなむ魚たち---
海とその生物にまつわる名前の由来についてお話ししましょう。
今回は今年の干支の午(馬)にちなんだ魚などをご紹介します。
まず始めにマトウダイをご紹介します。マトウダイはマトウダイ目マトウダイ科に属する、通称「あやかり鯛」の1種です。本州以南の西部太平洋・インド洋~東部大西洋といった温暖な海域の水深50~200m程度の海底付近に生息しています。体側面の中央部分には淡い色で縁取られた円紋があり、弓道の的に見立てられて、「的鯛」と呼ばれています。
一方、魚類やエビ類などの餌を捕る際に、口が前方に大きく伸出する姿が馬の顔に似ていることから、「馬頭鯛」とも呼ばれます。島根県では「バトウ」、富山県では「ウマダイ」とも呼ばれています。味は淡泊でコクがあり、たいへん美味な白身魚です。
このマトウダイ、ヨーロッパではキリスト教の十二使徒の一人、聖ペトロの魚と呼ばれています。伝承では聖ペトロが魚の口からお金を取り出す話があり、マトウダイの円紋は、その時の聖ペトロの指の跡とされています。ちなみに聖ペトロは、もともと漁師だったそうです。
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カブトガニも「馬」にちなんだ名前を持っています。カブトガニはカブトガニ目カブトガニ科に属する海生生物で、「カニ」とついていますが、カニよりもむしろクモやサソリに近い仲間です。このカブトガニ、甲羅の形から英語では、ホースシュークラブ(horseshoe crab,馬の蹄鉄のカニ)と呼ばれています。日本国内では、以前は瀬戸内海から九州北部沿岸に広く分布していましたが、沿岸開発などにより、生息数や生息場所が激減し、現在、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧種Ⅰ類に指定されています。また佐賀県伊万里市、岡山県笠岡市および愛媛県西条市の繁殖地が、天然記念物に指定されています。
皆さんは「海馬」という文字を見て、タツノオトシゴを連想される方が多いのではないでしょうか。しかし「海馬」とは元来、ギリシャ神話に登場する海神ポセイドン(ローマ神話ではネプチューン)が乗る馬車をひく半馬半魚の空想上の馬、ヒッポカンポス(hippocampus、ラテン語で馬と海獣を合わせた合成語)のことです。「ヒッポカンポス」はその後、タツノオトシゴ属の学名に用いられるようになりました。
タツノオトシゴは、英名をシーホース(seahorse、海の馬)と言い、馬の顔に似ていることから、日本でも「ウミウマ」や「ウマノカオ」などと呼ばれることもあります(海の豆知識Vol.50もご参照ください)。
ちなみにヒトの脳のうち、記憶形成に関与する「海馬(体)」は、その形がタツノオトシゴに似ていることから、名づけられたそうです。
また「海馬」は、海生哺乳動物であるセイウチやトドのことを表わす言葉として用いられることもあります。ちなみに「河馬」は、カバのことです。
海神ポセイドンが乗っている馬車をタツノオトシゴなどが引いている様は、何ともユーモラスですね。
大型魚の好む水温~野外実験にて~(4)温排水に対するブリの反応行動の昼夜による変化 |
大型魚の好む水温~野外実験にて~(2)「温排水に対するブリの反応行動」では、発電所放水口前面の温排水拡散域内に設置した生簀(円形、直径12m、深さ8~9m)内におけるブリの行動をご紹介し、冬季(1月)には海面近くの温排水によって水温が上昇している層を好み、夏季(7月)には温排水が届かない深さの水温の低い層を好むとご説明しました。では、これらの間の季節(中間的な水温条件の時期)にはどのような行動を取るのでしょうか?
下の図は12月に行った試験の結果です。背景の色は生簀内の水温を表します。温排水は海面付近を流れるため、水深が浅いほど高い水温を示す赤色になります。また、図中の細かい黒点は、ブリが泳いでいた水深を示しています。ブリは、夜間は表層の温かい層を主に遊泳し、昼間は水温の低い深い層に移動すると言う行動を繰り返しました。これは、水温条件としては温かい表層を好むが、昼間の表層は明るすぎて、好適な水温を選ぶ行動よりも光を避ける行動の方が勝ってしまうためと考えられます。12月より水温が低い1月では、昼夜とも表層に留まるようになりますが、非常に低い水温条件下では、明るくても温かい方が良いと言うことでしょう。
(中央研究所海洋環境グループ 三浦雅大)
図 12月試験における生簀内の水温とブリの遊泳水深
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