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---マイワシ---
海とその生物にまつわる諺や格言についてお話ししましょう。
今回は、古来より日本の重要な水産資源であり、近年、資源量が他の魚種と比べ回復傾向にあって、安定した漁獲が続いているマイワシ(ニシン目ニシン科マイワシ属)、真鰯・真鰮、英名:Japanese pilchard、sardine、Spotline sardineを紹介致します(Vol.3とVol.54でも取り上げました)。
マイワシは、日本では代表的なイワシで、イリコなどに加工されるカタクチイワシなどより鮮魚として流通する機会が多い魚です。他のイワシとの見分け方は、側線に沿っていくつか存在する黒い斑点が目印となります。その体側に並ぶ斑点からナナツボシなどとも呼ばれています。但し、個体により斑点の数は様々で、2~3列にわたり並ぶものや逆にほとんど見えないものも見受けられます。
また、マイワシは、沖縄を除く日本全国の沿岸に見られ、通常、海の表層を群泳し、動物性及び植物性のプランクトンを食べて生息しています。古くから日本漁業の中心を担ってきた魚種の一つで、増減はあるものの漁獲量が多く、価格も比較的に安価であるため鮮魚、加工品としても重要な魚種です。漢字の名前の通り、魚体が弱く、鮮度保持が難しかったため、古くは干物等に加工され保存食として重宝されてきました。現在は、鮮度保持や流通の技術が発達したことにより、全国各地に鮮魚として出荷されるようになっています。
なお、漁師が選んだ、本当においしい魚「プライドフィッシュ」では、大阪府では7~9月、富山県では2~5月、千葉県では6~7月が、それぞれの旬の時期として紹介されています。詳しくはそちらのホームページをご覧下さい。
(事務局 研究企画調査グループ 福本達也)
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ゴメは東北・北海道地方で鷗、または海猫の方言。イワシにゴメの群れがついて回る。これを「鳥山」といい、「鳥山が立つ」という。海鳥は魚群(ナブラと読みます)の第一発見者。漁師・釣り人はこれを目印にする。
小さな例えに大きなことを持ち出しても釣り合わない。例えが不適当である、ということ。
一度イワシを煮た鍋は、生臭味が染み付いて中々抜けないことから、縁を断ちがたい間柄や親類縁者などにいう。また、親類のにおいがする程度の親族の例え。
また、「鰯食ったる鍋の鉉」といえば仲間同士。臭い仲にも例えられる。血のつながりや家系の意味と鍋の両端を結ぶ鉉に掛けた言葉。
イワシは一度漁(スナド又はアサラと読みます)れ出すと、次々に漁れるようになるということから、普段、殆ど訪ねて来なかった者が、何かの拍子に来始めると、気安くなって、続けざまに寄り付く場合などにいう(鳥取地方の諺)。
二階堂清風編著「釣りと魚のことわざ辞典」東京堂出版より転載。
放散虫② ~地質学に革命をもたらしたプランクトン |
放散虫の骨格が海底に降り積もり、長い時間をかけて地層を形成していることをこれまでお話ししました。さらに長い時間をかけて地層が厚くなると放散虫骨格を含む古い地層は固まっていき、二酸化ケイ素を主成分とするチャートという岩石になります。チャートは河原や海岸、道端などでもよく見かけるありふれた岩石です。しかし、このチャートに含まれる放散虫化石がかつて日本の地質学におけるパラダイムの転換をもたらしたのです。
チャートに放散虫化石がたくさん含まれることは1920年代には分かっていましたが、チャートから放散虫化石を取り出す方法が無かったため、チャートの放散虫は長い間役に立たない化石と考えられていました。しかし、1972年にテキサス大学のPessagno博士とNewport氏によってフッ酸を用いた放散虫化石の抽出法が発表されて以来、新たな地質年代指標として世界中で研究されるようになりました。
地球の表面はいくつかのプレートに分かれており、それらが移動することで大昔からの大陸の離合集散、地震や火山といった現象を説明できます。1960年代半ばに生まれたこの理論はプレートテクトニクスと呼ばれ、海外ではすぐに受容されたものの、日本では1970年代後半から1980年代にかけてと、意外に最近のことでした。図のように、海洋プレートは大陸にぶつかると、同じ地層を繰り返し積み重ねる付加体という構造を形成します。日本列島の大部分は付加体で形成され、はるか遠洋の海底で堆積したチャートを含みます。放散虫化石の研究はこれまで不明瞭であった付加体の年代を決定づけ、日本列島の成り立ちを明らかにし、プレートテクトニクスの直接的な証拠となりました。放散虫化石は日本におけるプレートテクトニクスの受容に大きな役割を果たし、まさに日本の地質学に革命をもたらしたのです。
(中央研究所 海洋環境グループ 池上 隆仁)
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