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---東北編②---
県の花や県の鳥の様に、全国の都道府県の内、半数以上の県がシンボルとして「県の魚」を制定しています。またシンボルとしての「県の魚」とは別に、それぞれの県の特色ある複数種を選定した「旬の魚・四季の魚」を制定しているところもあります。
ここでは「県の魚」※にまつわるお話しをしましょう。今回は、四国地方です。
※各都道府県の公式ウェブサイトにおいて、県の花や県の鳥と同様に、都道府県のシンボルとして紹介されているものを、「県の魚」としています。
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東北地方北東部に位置し、太平洋に面した海岸線は、北部が典型的な隆起海岸、南部が典型的なリアス式海岸からなる岩手県。この県の魚は、南部さけ(サケ、学名:Oncorhynchus keta)です。
サケは、北太平洋の寒流域に分布するサケ目サケ科の魚です。ご存じのとおり、サケは川で生まれ、海で育ち、再び生まれた川に戻って産卵する性質を持っており、この性質を母川回帰といいます。どの様にして生まれた川に戻ってくるのかは、いまだ解明されていませんが、嗅覚や太陽コンパスなど、複数の方法を賢く使い分けているという考え方が有力です。
岩手県公式ホームページによると、秋サケでは本州一の漁獲量を誇り、昔から多くの県民に親しまれてきた魚であることから、三陸・海の博覧会の開催を記念して、平成4年2月に県の魚に選ばれました。江戸時代には、「南部鼻曲がり鮭」として、南部藩の重要な財源とされたサケは、現在でも岩手県のシンボルとして、重要な役割を担っています。
▶岩手県公式ホームページ〉…〉岩手県のシンボル
http://www.pref.iwate.jp/profile/001637.html
東北地方北西部に位置し、日本海に面した海岸線を持ち、中央北部には男鹿半島が日本海に向けて突出した秋田県。この県の魚は、ハタハタ(学名:Arctoscopus japonicus)です。
ハタハタは、スズキ目ハタハタ科の魚で、日本海や北日本の太平洋側からカムチャッカ、アラスカの水深200~400mの砂泥底に生息しています。秋田県を中心とした日本海北部では、季節ハタハタ漁として、毎年11月後半~12月にかけてのわずかな期間、産卵のため浅場に押し寄せた群を定置網や刺し網により漁獲しています。普段は全く姿を見せない魚が、正月前に突然、大群で押し寄せてくることから、秋田県では神様からの恵みとされ、「ハタハタがないと正月が迎えられない。」とも言われています。
秋田県公式サイトによると、県民からの意見を基にアンケートなどにより、平成14年12月に県の魚に選ばれました。昭和51年以降漁獲量が激減し、平成4年から3年間の全面禁漁という苦渋の決断の末、危機的状況から脱した秋田県のハタハタ。秋田県民の想いとともに、現在も資源管理が徹底されています。
▶秋田県公式サイト〉…〉秋田のシンボル
http://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/25804
注)県のシンボルが掲載されているウェブページ(URL)は、本紙発行時のもので、予告なく変更されることがあります。
ご迷惑をおかけします(5)-フジツボ- |
不本意ながら、人間活動の迷惑になってしまう海生生物、今回はフジツボを紹介します。フジツボは、体が山のような形をしたセメント物質の殻に包まれた生物です。卵からふ化した後、しばらくはエビやカニなどと共通な浮遊幼生の時期を経ることから甲殻類に分類されています。日本では、波打ち際から水深数千mの深海底まで、さまざまなフジツボが約150種も確認されています。
海岸構造物や岩礁、時には、他の貝の殻、カメの甲羅やクジラの体表にも張り付き、ヒラヒラの付いた6本の脚(蔓脚:まんきゃくと言います)を殻の中から出して扇の様に広げ、水中の植物プランクトンや有機物を絡め取って食べています。しかし、ムラサキイガイと同様、漁業施設や船底、発電所取放水路の内壁に群居して張り付き、漁業、海運、発電の妨げとなることがあります。特に、セメント物質の殻は強固に接着しており、死んでも殻は付着したままのため、除去作業は大変苦労するだけでなく、接着面の破損が心配されます。
現場では、塩素などのオキシダントを含んだ海水電解液を用いて幼生の付着や成体の成長を抑制する、逆流やスポンジボールによる物理的な洗浄で固着の弱い小型のうちに落としてしまうなどの工夫が行われています。しかし、付着をゼロにすることは困難で、海を共有するフジツボとヒトの間には、葛藤が絶えないようです。
(中央研究所 海洋環境グループ 眞道 幸司)
蔓脚を広げる様子 |
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密集して付着する様子 |
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