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---エビ---
海とその生物にまつわる諺や格言についてお話ししましょう。
今回は、エビ(十脚目(エビ目)Decapodaに属する動物のうち、ヤドカリ下目とカニ下目を除いた分類群の総称、 和名:海老、蝦、 英名:Lobster, Prawn, Shrimp)をご紹介します。
和名の「えび」はその色が葡萄に似ていることから付けられたもので、現在でも「葡萄色」と書いて「えびいろ」とも読まれます。また、長い触角(髭)と曲がった腰を老人に見立て、長寿を願う縁起物として「海老」の当て字が用いられます。
漢字については、イセエビ等の海底を歩行する大型のエビを「海老」、サクラエビ等の海中を泳ぐ小型のエビを「蝦」と書くとも言われますが、厳密なものではありません。英語では大きさで呼び方が異なり、イセエビ程度をLobster、クルマエビ程度をPrawn(英)、小さなエビをShrimpと呼びます。
なお、カブトエビ、ホウネンエビ、カイエビ、ヨコエビ、シャコ、オキアミ、カブトガニ等は、名前に「エビ」が付いていたり、姿形が似ていますが、エビ目ではありません。
活きエビの体表を覆う殻には、蛋白質と結合したカロチノイドの一種である「アスタキサンチン」という赤い色素が含まれていますが、結合状態では赤くなれず、緑、紫、褐色等様々な色をしています。しかし、加熱すると蛋白質との結合が切断され、きれいな赤色になります。
エビは、河川から深海まであらゆる水環境に世界中で約2,500種以上も生息し、そのほとんどが食用にされますが、豊かな国において大量消費される傾向が強く、日本では1990年代前半には国民一人当たりで年間約3kgを消費し、世界第1位の消費量でした。その後消費量は徐々に減少し、現在は年間約2kg強程度になっています。一方、エビは食物アレルギーを起こしやすいこともあって、平成20年度には製品を販売する際に原材料表示が義務づけられる様になりました。
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海老は旨い。しかし、それが何時までも食べられるとは限らない。転じて、良いこともあれば、悪いこともある例え。
僅かな元手で大きな利益を得ること。また、小さな労力・負担で大きな収穫や利益を上げること。俗に言う「エビタイ」。
海老のように外見はいかめしく威張っているが、器量が伴っていないこと。殻ばかりで、中身は大したことはないものの例え。
二階堂清風編著「釣りと魚のことわざ辞典」東京堂出版より転載。
調査航海こぼれ話(銚子沖の太夫) |
2004年4月25日、銚子沖約75km。空はスッキリ晴れ渡り、穏やかな夜明けでした。本船周囲の水面に沢山の海鳥たちが囲み、彼らの声が方々から響いていました。
茨城沖から道南海域では多くの海鳥を観察することが出来ます。その花形とも言えるアホウドリ。白い胴体に淡黄色の頭巾、明るいピンク色の長い嘴。翼開長は2mを優に超え、恐らく日本周辺最大の海鳥と言えるでしょう。
不名誉な名称の一方「沖の太夫」という異称を持ちます。両翼を一杯に広げ帆翔する姿は正に、華麗、優美。他と一線を分ける存在感を放ち、太夫に相応しい風格です。かつて乱獲の影響で激減し、1949年には絶滅とも見なされましたが、1951年の再発見から様々な保護活動を経て、今ではようやく千数百羽を数えるまでに増えてきましたが、未だ絶滅危惧種に指定されたままです。
この日は、数百羽の海鳥の中に、20羽程度観察することができました。繁殖地はここより約700km南方の鳥島。はるばる飛来する沖の太夫は、日本周囲の海が豊かであることを象徴していると言えるでしょう。
(中央研究所 海洋生物グループ 稲富 直彦)
(年間約3カ月に亘る海水、海底土採取航海※の日誌から)
※海生研は毎年、全国の原子力施設の沖合において海洋調査を行っています。
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