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---ニシン---
海とその生物にまつわる諺や格言についてお話ししましょう。
今回は、平成16年4月発行の海の豆知識19号(こちら参照)に続き、ニシン(ニシン目ニシン科ニシン属、和名:鰊・鯡、学名:Clupea pallasii、英名:Herring、なおClupea pallasiiやHerringはタイセイヨウニシンAtlantic herringを主に指すので、日本近海のニシンをPasific herringとして区別することもある)をご紹介します。
ニシンはオキアミや卵・仔稚魚を含む小魚などを食べる回遊魚で、北太平洋および北大西洋に広く分布し、一部は海と繋がった湖沼でも生息しています。成魚の体長は30-35cmほど、背側は青黒色、腹側は銀白色の細長い魚で、日本付近では、春に産卵のため北海道沿岸に現れるため、別名「春告魚(はるつげうお)」とも呼ばれます。
塩焼き、フライ、マリネなどや、身欠鯡、燻製、昆布巻などの加工品として食されるほか、その卵を干したり塩蔵したものは「数の子」と呼ばれ、珍重されます。
最盛期の明治30年(1897年)には100万t近くの水揚げがあり、北海道沿岸には「ニシン御殿」が立ち並ぶほどでしたが、昭和30年(1955年)頃を境に漁獲量は激減し、更に1,000t程度にまで低下したため、平成8年(1996年)以降は漁獲制限を呼びかけたり、孵化させた稚魚の放流を試みた結果、改善傾向にはあるものの、未だ国内年間漁獲量は数千tの水準で、市場に流通しているニシンの大半はロシアやカナダなどからの輸入品です。
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(イギリスの言葉)何事も確実に自分の掌中にするまでは本物では無い、と言うこと。更に言えば、鰊が網に入っただけでは不十分であり、網が破れたり、飛び跳ねて逃げることもあろう。魚籠かクーラーに納めるまで、安心はできない。
(青森県五戸地方の言葉)鰊は鮭同様、余すことなく全部食べられるが、頭の付け根の僅かな身(肉)では旨さを云々する程の量は無い。鰊というからには、鶴は北の麗人「丹頂鶴」と思われるが、丹頂鶴の頭の赤と鰊の頭を掛け、実際の食の対象とはならないが、姿・形・色合いなどから旨いだろうとの想像と期待、それに長寿にあやかりたいとの願いが込められているのであろうか?
(新潟地方の言葉)少々見下げた言い方であるが、かつての豊漁時代は漁れ過ぎて値段が安かったことが由来であろう。
ニシンなど水分の多い魚は、振り塩をして水気を抜いた方が味は濃縮されて旨くなる。また適当な塩分は汗を流して働く人々に好適な食べ物でもある。冷凍・冷蔵技術や輸送が未発達であった時代、安く買えた糠鰊・身欠鯡などの保存食は焼くだけで手軽な副食になるので、庶民には重要な食材であった。
鯡の字は下魚故に魚に非ずと当てたという説と、春のニシン漁の多寡が北海道の1年の経済を左右・支配したために、魚以上で鯡としたとの説もあるが、「鯡」の字は主に身欠鯡に用いられる。昨今のニシンは殆ど輸入物、とても下魚とは言えない。
二階堂清風編著「釣りと魚のことわざ辞典」東京堂出版より転載。
飼育生物こぼれ話(7)テトラセルミス、パブロバ |
栄養価に優れている植物プランクトン!
魚の子供(仔稚魚)を育てる時には、餌として動物プランクトンのワムシを与えます。そのワムシを育てるための餌は植物プランクトンです。私たちはテトラセルミスとパブロバという植物プランクトンでワムシを育てています。
テトラセルミス
(長径約0.015mm) |
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パブロバ
(直径約0.006mm)
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栄養価の高い植物プランクトンを食べたワムシを仔稚魚に与えると、仔稚魚は活力を増し、生残率も高くなります。植物プランクトンの栄養価はワムシを介して魚類に届くわけです。
その他、仔稚魚を育てる飼育水槽には、ワムシの他に、植物プランクトンも一緒に入れておきます。これにより、飼育水が浄化されるとともに、仔稚魚にとって適度な明るさが保たれます。また、飼育水中のワムシは植物プランクトンを食べますので、仔稚魚は栄養の高いワムシをつねに食べることができます。
(実証試験場 飼育チーム) |
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