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---アサリ---
海とその生物にまつわる諺や格言についてお話ししましょう。
今回は、アサリ(マルスダレガイ目マルスダレガイ科アサリ属、学名:Ruditapes philippinarum、英名:Japanese littleneck)をご紹介します。アサリは、北海道から九州、朝鮮半島、中国大陸沿岸、台湾に分布する二枚貝です。河川水などにより塩分がやや低い内湾の干潟など、潮間帯中部から水深10m程度の砂礫泥底に生息しています。楕円形で殻長(殻の前端から後端までの長さ)は40mm前後になり、殻の表面には放射細肋と成長線により網目状の筋がついています。貝殻の色や模様は、非常に多彩です。模様には一定のパターンがあるものの、地域差や底質環境によって変化します。色や模様は、遺伝することがわかっています。
アサリは、砂の中から伸ばした水管から海水中の植物プランクトンや浮遊有機物を取り込んで、えらで濾しとって食べています。アサリの濾水量(濾過する水の量)は、水温が15℃の場合、殻長30mmのアサリ1個体で1時間あたり1.5Lにもなります。また、アサリが取り込んで食べられなかった粒子などは、粘液で固めて排出します。これは偽糞と呼ばれ、ゴカイやカニなどの餌となります。そのためアサリが多く生息する干潟などは、海水を浄化する場所として、非常に重要な役割を持っています。
また、日本各地の貝塚(縄文時代のゴミ捨て場)から貝殻が出土していることからもわかるように、アサリは大昔から食用とされてきました。江戸時代には、アサリ売りが街を回る姿が日常の光景だったようです。旬は産卵前の春~夏とされていますが、年間を通じて流通しています。クセがなく、非常に旨味が強いアサリは、味噌汁のみならず、酒蒸しやフライ、炊き込みご飯など、様々な家庭料理に用いられます。また、佃煮や干物などにも加工されるなど、まさに国民的な食用二枚貝と言えるでしょう。
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「がらりと言えば...」とも。貝汁を盛るとき貝の音がする。音を聞けば汁の実が貝であることが分かる。素早く物事を悟れ、機転を利かせよ、の意〈宮城地方の諺〉。「えへんたら煙草盆」「一と言うたら二を悟れ」などという地方もあり、また「がらったらつぶ汁」も宮城地方の言葉。ここでのツブは田螺のこと。また、「がらりといえば田螺汁と知れ」ともある。
アサリやハマグリを行商していた者が、糊売りに転業する、の意から転じて、小さな商売をしていた者が商売替えをしても、所詮は似たようなもので、小さなことしか出来ない、ということ〈黄表紙 桃太郎発端話説〉。昔からシジミ売り・アサリ売り・納豆売りは、貧乏人の倅の仕事とされ、その倅は孝子※の鏡と称されたもの。
※孝子とは、親によく仕える子供、親孝行な子供のこと。
二階堂清風編著「釣りと魚のことわざ辞典」東京堂出版より転載。
微小生物の取水取り込み影響(4)-魚卵・仔稚魚の生残率- |
植物・動物プランクトンに比べて、魚卵・仔稚魚は海域に存在する密度が非常に低いため、十分な標本を得るのは困難です。しかし、試料採取に稚魚輸送用ポンプを用い、取水口と放水口で魚卵の生残率を調査すると、取水口での生残率は41.9~78.8%であったのに対し、放水口での生残率は9.1~57.1%で、放水口で生残率が有意に低下しました。
一方、仔稚魚は取水口での生残率が12.8~58.8%、放水口での生残率は0~100%となりましたが、取水口と放水口で生存率が逆転する場合もあり、有意な結果は得られませんでした。
今回の結果から、放水口での生残率は、少なくとも30%以上であると考えられます。
次回は、発電所内の生物捕食についてご紹介します。
(事務局 研究企画調査グループ 山田 裕)
図 取水口及び放水口における魚卵の生残率の比較
(中部海域夏季調査の例) |
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