海の豆知識Vol.80  

県の魚-その8-
---九州・沖縄②---

 県の花や県の鳥の様に、全国の都道府県の内、半数以上の県がシンボルとして「県の魚」を制定しています。またシンボルとしての「県の魚」とは別に、それぞれの県の特色ある複数種を選定した「旬の魚・四季の魚」を制定しているところもあります。
 ここでは「県の魚」※にまつわるお話しをしましょう。今回は、九州・沖縄地方②(福岡県、長崎県)です。

※各都道府県の公式ウェブサイトにおいて、県の花や県の鳥と同様に、都道府県のシンボルとして紹介されているものを、「県の魚」としています。

福岡県「アジ」
イラスト:金屏風を背景に黒田節を踊る博多人形とマアジ 九州北部に位置する福岡県は、日本海側の「筑前海」、瀬戸内海側の「豊前海」、干拓広がる「有明海」という特色ある3つの海に囲まれています。その中で筑前海は対馬暖流の恩恵を大きく受ける海。沿岸の岩場には海藻が豊富で定着性のアワビ、サザエ、ウニなどが刺し網や潜水漁業などで獲られています。あわせて、沖合にある天然礁には、マアジやマサバをはじめ、マダイ、ケンサキイカなどの回遊魚が集まり、巻き網やゴチ網などで獲られています。その他にも、スズキ、カレイ、フグ、エビ、タコを始め多種多様な魚種の漁獲があります(プライドフィッシュ福岡県のホームページより抜粋)。
 こうした中、福岡県では、福岡の魚として、海面の魚類では、サバ、アジ、マダイ、ブリ、ヒラメ、内水面の魚類では、アユ、コイ、エビ・カニ類では、クルマエビ、ガザミ(地方名ワタリガニ)、イカ・タコ類では、ケンサキイカ、貝類では、アサリ、その他では、ノリの12種類がそれぞれ選ばれています。

イラスト:長崎の出島を背景にはしゃぐマアジ長崎県「アジ」
 日本の西端に位置し、多くの離島を抱える長崎県。総延長約4,100㎞、全国2位の長さを誇る海岸線は変化に富み、数々の半島、岬、湾、入江が存在しています。さらに周辺海域は、九州の西方を北上する対馬暖流、済州島の西方から南東に流れる黄海冷水や九州西沿岸水などの好条件が重なる豊かな漁場。内湾から沖合まで、その多様な漁業環境を活かして、巻き網漁業や養殖業などの様々な漁業が営まれています(同長崎県のホームページより抜粋)。
 こうした中、長崎県では、県の基幹産業である水産業に対する県民の理解と親しみを深め、県の水産物を内外にPRし、県の水産業を振興するうえでのシンボルとするため、県を代表する魚として四季ごとに12種類が選ばれています。それぞれ、春は、タイ、イカ、アマダイ、夏は、アジ、イサキ、アワビ、秋は、サバ、トビウオ(地方名アゴ)、ヒラメ、冬は、ブリ、イワシ、フグとなっています。

 分け方は異なりますが、福岡・長崎両県ともに12種類の魚が選ばれており、このうち、サバ、アジ、タイ、ブリ、ヒラメと共通する魚種が5つ見受けられます。これらのなかで季節にちなみ、夏に美味な魚としてアジ(スズキ目アジ科アジ亜科の総称)を簡単に紹介します。既刊Vol.12、Vol.52「魚のことわざ」でも取り上げたアジの仲間は、マアジのほか体型の丸いマルアジ、オニアジ、平たいカイワリ(地方名ヒラアジ)、シマアジ等が獲れています。なかでもマアジは最も多く獲れており、身は青魚では淡白で、たたき・塩焼、干して開きなどにし、夏に美味と福岡県漁連のホームページで紹介されています。また長崎県でもマアジ(地方名ごんあじ・野母んあじ)が「漁師が選んだ、本当においしい魚」としてプライドフィッシュに紹介されています。詳しくはそちらのホームページをご覧下さい。

(事務局 研究企画調査グループ 福本達也)

放散虫① ~太古の昔から次々と生み出される造形美

 放散虫(Radiolaria)は海に生息する単細胞の微小動物プランクトンで、ケイ酸質(ガラス質)または硫酸ストロンチウムの内骨格を持つアメーバのような生き物です。死んだ後もガラス質の骨格は腐らずに残り、海底に堆積します。骨格の大きさは放散虫の種類によって異なり、0.05mmの小型のものから0.5mm程度の比較的大きなものまで存在します。放散虫の種類は骨格の形によって分類され、地層から出現する骨格の形(=種類)によって地層の年代を決定することができます。
 放散虫を第一に特徴づけるのは、自然界で作られたとは思えないような精緻かつ多様な骨格の形です。放散虫は5億年も昔から進化を続けているため、現在知られているものだけでも約11,000種類が存在します。そのうち現代においては約800種類が熱帯から南北両極域まで世界中の海に生息しています。つまりそれだけ多様な骨格が存在するということなのです。顕微鏡を通してみるその姿は、静かにきらめく星々を見ているようです。小説家の日野啓三は、放散虫のことを地球上で最も美しい形のひとつ、生きている水晶、比類ない美的センスをそなえて水中を浮かび漂う砂の微粒と表現しています。興味を持った方は是非画像検索してみてください。次回はサイエンスにおける放散虫のより実用的な面についてお伝えします。

(中央研究所 海洋環境グループ 池上 隆仁)

暗視野で撮影したインド洋深海堆積物中の放散虫骨格

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