|
|
---メバル---
海とその生物にまつわる諺や格言についてお話ししましょう。
今回は、メバル(カサゴ目フサカサゴ科メバル属、和名:目張、英名:Darkbanded rockfish, Black rockfish)をご紹介します。
名前の由来は、読んで字のごとく眼がパッチリと大きく、飛び出しそうな魚だからです。地方によっては、メバリ(松江)、メバチ(越前、松島)、ハチメ(北陸)、ソイ(東北)、アオテンジョウ(紀州)などの名で呼ばれています。
棲んでいる環境によって、体の色が黒っぽいものから白っぽいもの、赤っぽいものまで変化に富み、それぞれクロメバル、シロメバル、アカメバルと呼ばれています。最近の研究で、これら3つが別々の種であることがわかりました。
体は楕円形で側偏し、体側に不明瞭な暗色横縞が数条あり、体長は30cmに達します。
沿岸の岩礁域や藻場で単独または数尾、ときには10~20尾の群れをつくって生息しています。人工魚礁にはよく集まりますが、魚礁の内部に入ることは少ないようです。
胎生で、仔魚は卵巣内で孵化し、親魚の胎内で発育してから、冬に全長5mm前後になってから生み出されます。
主な漁法としては、手釣り、延縄、刺網、定置網があります。鮮魚として氷冷出荷され、店頭では丸のまま並ぶことが多く、春先から夏にかけてが食べ頃です。このため春告魚とも呼ばれ、俳句では春の季語になっています。
白身で身が締まっており、淡泊な味です。刺身に適しており、飲食店などでは姿造りにされることが多く、また小振りのものは、丸のまま唐揚げや煮付けにします。
|
|
メバルなど根魚釣りは、魚に根(岩礁)の穴に潜られて仕掛けを切られないよう、掛かったら間髪を入れず、全身で竿を立て根から離すことが肝要。根魚は岩礁の穴に潜られないように注意しろという教え。
メバル釣りに言われる言葉。風がなく水面が鏡のような日は「目張凪」で釣り日和。次は海底の状況をよく覚えていて上手に操船してくれる船頭次第。そして、視力がいいメバルは仕掛けが細い方がよく釣れる。
海の船釣りでは船頭が絶対で、釣り人は如何に名人と自負しても、漁師から見たら所詮は素人。漁師はメバルなどの魚の集まる所をよく知っている。何事もその道の専門家に相談するのが得策であるとの教え。
「現代おさかな事典」エヌ・ティー・エス、
二階堂清風編著「釣りと魚のことわざ辞典」東京堂出版より転載。
調査航海こぼれ話(怪獣(海獣)出現?!) |
2004年5月22日、青森県艫作崎(へなしざき)西方沖約170kmの日本海洋上。水深が4000m近くあるこの海域の色々な深度から海水を採取する作業にあたり、船は同じ場所に漂う一日でした。荒天明けの海況は急速に落ち着いて、実に穏やかな昼時の出来事です。
「トドだ!」と叫ぶクルーの声。見れば、怪獣ならぬ海獣一頭。3m程有りそうな巨体を敏捷に操り、本船間近を周回し、船底をくぐり抜け、顔を上げれば「ブハッ!」と派手な呼吸音を放つ。春の航海でこれほど迫力のある生き物との遭遇は初めてでした。
後に、専門家の方々に画像を観ていただき「飼育環境と異なるので断定出来ないが」と前置いた上で、「キタオットセイ♂」の可能性もある、とのコメントを頂きました。
キタオットセイは日本沿岸では最も良く見られるアシカの仲間で、メスの体長1.5m程に対し、オスは2mを超え別物のような迫力があります。日本海洋上での作業は、海鳥のギャラリーも少なく、もっぱら静かに進行する雰囲気に慣れている所。時として迫力ある珍客の奇襲に驚かされます。もっとも、彼らにしてみれば、我々の方がよほど珍客なのでしょうけれど。
(中央研究所 海洋生物グループ 稲富 直彦)
(年間約3カ月にわたる海水、海底土採取航海※の日誌から)
※海生研は毎年、全国の原子力施設の沖合において海洋調査を行っています。
|
|