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---ハタハタ---
今回は、ハタハタ(スズキ目ハタハタ科ハタハタ属、学名:Arctoscopus japonicus、英名:Sailfin sandfish)をご紹介します。ハタハタは、日本海や北日本の太平洋側からカムチャッカ、アラスカの水深200~400mの砂泥底に生息し、主に日本海側で漁獲されています。体長は20cm前後になり、左右に扁平な体型の背中には不定形の褐色の斑紋があります。また鰓蓋に5本の鋭い突起があります。11~12月にかけて浅場の藻場に集まり、産卵します。
昔から冬の到来を予感させる雷鳴轟く大荒れの時期に、産卵のために大群で浅場に押し寄せるこの魚は、はたた神(激しい雷鳴のこと)の魚と考えられ、ハタハタと呼ばれるようになったそうです。漢字では、魚偏に神「鰰」の字が用いられます。またカミナリウオとも呼ばれ、魚偏に雷「鱩」の字も用いられます。
秋田県を中心とする日本海北部では、季節ハタハタ漁として、11~12月頃、浅場に押し寄せた群を定置網や刺し網により漁獲しています。この時期のハタハタは、「ブリコ」と呼ばれる卵を持っており、ねっとりと舌にからむ濃厚な旨味が人気です。これに対し、鳥取県を中心とする日本海西部では、餌を求めて深層を回遊しているハタハタを底引き網で漁獲するため、ブリコを持たない分、身には脂がのっており、漁期も9~5月頃となっています。
ハタハタは、クセがない白身で甘みがあり、また身離れがよく鱗もないため、塩焼きや干物、田楽、煮魚など様々な形で食されています。特に、ハタハタを塩漬けにして発酵させた魚醤を用いた「しょっつる鍋」は、秋田名物として有名です。また、冬を迎える一時期に大量に獲れたことから、古くから塩漬けや味噌漬け、飯鮨として雪深い冬の間の貴重なタンパク源とされ、現在も郷土料理として息づいています。
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何時ものらりくらりとして働きもせず、寝ては食い、食っては寝ているような怠け者を「鮨ハタハタ!」と嘲笑していう言葉。ハタハタ鮨は、桶に漬けられ上から重石を載せ、長期間(約1ヶ月)寝かせておく。そのために、旨いハタハタ鮨も怠け者の代名詞にされてしまった。ハタハタ鮨は飯鮨である。
他人事は、自分に無関係の意。男鹿(秋田県)でハタハタが如何に大漁であっても、その好景気に浴せるのは地元の男鹿だけで、漁場から遠く離れた地方では何の恩恵もない。
〈秋田地方の諺〉。「ただより高いものはない」ということ。今年もハタハタの季節がやって来て、浜の人から贈られた。その好意に謝して返礼したら、近所の魚屋で買うハタハタより高くついた。よくある話である。
二階堂清風編著「釣りと魚のことわざ辞典」東京堂出版より転載。
化学物質の海生生物への影響を調べる(3)-稚魚を用いた急性毒性試験- |
海産魚の多くは、淡水魚と比べて飼育や種苗の生産が難しいため、実用的な毒性試験に使用可能な海産魚はあまり多くありません。そこで、飼育や仔魚の取扱いが比較的容易な海産魚であるプテラポゴン・カウデルニィ(テンジクダイ科)を選定し、3物質について急性毒性試験を行いました。試験物質を含んだ海水で本種の稚魚を96時間飼育した時に半数が生き残る試験物質濃度(96時間半数致死濃度)を算出し、その値と他の海産魚で得られた値を比較したところ、本種は他の魚種と比較して化学物質に対する感受性が同等もしくは高い種であると考えられました。水環境中の化学物質影響を評価する際の試験生物の選定条件として、化学物質に対する感受性が高いことは、化学物質の有害性をより的確に見積もる上で極めて重要です。また、本種の稚魚は、前述のように、ハンドリングに比較的強いなどの特徴を有することから、毒性試験に用いる海産魚として多くの適性を有すると考えられます。
(中央研究所 海洋生物グループ 岸田 智穂)
プテラポゴン稚魚の写真。
体長は、1cm程度。 |
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トリブチルスズ化合物を用いた
試験の風景。 |
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