海洋環境における放射能調査
■福島県の近傍、沖合海域等における放射能調査
 2011(平成23)年3月11日に発生した東電福島第一原発事故に伴い、3月23日より東電福島第一原発周辺海域(30km圏外)について緊急的にモニタリングを開始しました。令和6年度は「福島県周辺海域」として、原発から5㎞以内の近傍海域、宮城県・金華山沖から千葉県・銚子沖にかけての沖合海域、東経142°から東経144°までの外洋海域において、国が定めた「総合モニタリング計画」に基づいた調査を受託し、実施しています。これらのモニタリング結果は、速報値として原子力規制委員会原子力規制庁のウェブサイトにて公表されています。

● 海水
 沖合・外洋海域で採取した海水に含まれるセシウム-137の濃度は、事故直後の2011年3月下旬より上昇が始まり、4月15日に最大となりましたが、4月中旬以降は減少に転じています。2011年9月中旬以降は、変化が緩やかになりましたが、全体的に減少傾向を示しています。
 2019年秋には、一部測点の表層水で、前後の調査と比較してやや高い濃度が確認されましたが、降雨後の出水による一時的な上昇であったと考えられます。
 その後も徐々に減少を続けており、事故以前の過去5年間の濃度の範囲に収まりつつあります。一方で、近傍海域では、現在も沖合・外洋海域に比べて一桁程度高い濃度で推移しています。


福島県周辺海域の海水中セシウム-137濃度の経年変化
図中の帯の範囲は、別途実施している調査結果から、東電福島第一原発事故前5年間の福島県周辺海域における海水(表層水)のセシウム-137濃度範囲を示しています。
 
● 海底土
 沖合海域で採取された表層海底土(0~3cm)に含まれるセシウム-137の濃度は、2011年秋には最大値を示し、その後は緩やかに減少傾向に転じています。セシウム-137の水平的な濃度分布は、必ずしも発電所からの距離により決まるものではなく、事故直後の海水からの沈着、海底土の性状などが関連している可能性があります。海底土に含まれるセシウム-137の濃度の減少は、主に海底土の再懸濁と水平移動に加えて、底生生物の海底土表層撹乱による下方移動や海底土からの溶出、脱着もその要因となっている可能性があります。
 
 
福島県周辺海域の海底土に含まれるセシウム-137濃度の経年変化